【別欄】べつらん

別欄・・ベランダ

高校生の頃、建築が好きだった。街が好きだというのもあるが、それ以上に建物の幾何学的形態に関心があった。建物を訪れ、その中に入れればよいが、建築雑誌に載るような住宅や地方公共空間では、いつもそうはできない。したがって、その建物の図面を見て想像することになる。

その癖で、住宅の間取り図が好きだ。郵便受けに広告が入っていると、まず間取り図を目で探す。今住んでいるのは妻が選んだ集合住宅だ。2人で住んで10年になる。最高の間取りだと今でも思う。高校生の頃は建築家に設計してもらいたいとぼんやり考えていたが、懐にそんな余裕はない。

間取り図でいつもでっぱる場所がある。ベランダだ。上下の階からも離れて造られる、三方から独立した空間。住宅の中でも特殊な空間である。ベランダの由来はポルトガル語で、ヒンディー語に伝わった語彙らしい。英語では屋根のある場合をベランダ、ない場合をバルコニーという。

間取り図の欄でも実空間でも別注の空間。そんな意味でベランダを「別欄」と音訳してよいのではと思う。由来を訊かれたら間取り図を思い出してもらえば、と言おう。

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